vol.21 過程を楽しむスローライフ
しばらくお休みしていたこのコーナー。それはライフスタイルであるオーガニックを紹介するコーナーなだけに、自分自身がきちんと落ち着いて、思いをめぐらせながら書く時間が必要だからです。つまり、前回の11月半ば以来、事務所の移転を中心とした業務に追われそういう時間が取れなかったということになりそうです。
今回、この事務所移転でつくづく思ったことが1つあります。それは何をするにもものすごいお金がかかるけれど、自分たちで工夫して、自分たちで作っていけば、専門家のようにすばやくきれいにはできないかもしれないけれど、そのコストは最小限に、それでいて思うものを作っていけるということです。(写真下:手作りのワインセラー進行中)それが人々の生活に当たり前に浸透しているのがヨーロッパ。最近でこそヨーロッパの人というのは、そういうもんなんだなあとわかってきましたが、初めて向こうで長期間過ごしたときは、何でも自分でやってしまう人が多いことに驚いてばかりでした。
例えばこの間の夏に訪れた編集者夫妻の家。百年はゆうに経っている農家を買い取って、家族・親戚・友人総出で、少しずつ少しずつ部屋を住める状態に修理して暮らしていました。住み始めて15年経った今でも、まだ地面がむきだしの部屋も残っていて、ここはまだこれからねという感じ。2004年の夏は庭にプールとサウナを作ることになり、私が訪れたときはプールのいわゆる水が入る部分とサウナのための建物ができていましたが、プールの周りはまだでこぼこした地面。そこで私も一緒にレンガやブロックを運んで、間に砂利を敷き詰めて・・・と、得意の?力仕事に借り出されました。職人に頼めばきっと早いのだろうし、古いものは壊して新しくした方が・・・というのが現代的発想なのだろうと思うけれど、そこは流れている時間も考え方も大いに違うようです。
(写真:プールではないですが、丸太の切りくずを利用したステキな床)
たぶんそれは、作る過程から楽しむということなのでしょう。今、日本でもよく取り上げてられているスローな生活とはこういうことなのではないかと思います。すっかりできあがった新築の家ももちろん素敵ですが、一から十とまではいかなくとも自分たちで大部分を作り上げた家は、たぶんもっと違う思いがこもった別の喜びがあると思います。それは食事も同じ。レンジでチンすれば食べられる調理済み食品は、とても便利である反面、材料を買いに行って、下ごしらえをして、時には本も見ながら新しい料理にチャレンジしたり、食べる人の顔を思い浮かべながら作っていく、そういう楽しみは一切味わえません。
ちょっと時間をかけることで、想像力も、創造力も存分に発揮できて、しかもできあがりも楽しめる。そんな喜びに気づいた人たちの間に広がっているのが、オーガニックな(スローな)ライフスタイルであるように思います。
オーガニックなライフスタイルは楽しくておいしくて、気持ちいい。それが私の結論です。