vol.10 オーガニックを選択する心意気
何代も続いた農家で、両親や祖父母がやっていた通りの方法を頑固に守りつづけてきた、という理由で農薬や化学肥料を一度も使っていないという例もあるにはありますが、現在の世の中でオーガニック農業に取組んでいる人は、何らかの理由で転換したり、新しく農業を始める際にオーガニックでやることに決めた、という人が大部分です。
では、その理由とはいったい何なのでしょう?手間も作業も増え、一昔前までは村八分にもなりかねなかったオーガニック農業への取組みに向かわせる原動力は?ヨーロッパのオーガニック農家の人々になぜ転換したのですか?という質問をしてみたところ以下のような答えが返ってきました。
・個人的な喜びの追求と地球を守るため、これまでとは異なった生産者と消費者の関係の中で高い品質の製品を提供するため。
・そうした生き方の選択。環境のための契約だと思っている。
・人間の健康と植物・大地の関係をはっきりと意識したこと。それは地球規模の話であり、当然生き方にも通ずる。
・化学物質が小さな動物を殺し、例えその量を減らしても植物や人間、大地の健康を害することは明らかだと思ったから。私たちと同じ権利をもつ未来の世代のことも考えなくてはならない。
・土にいつまでも残ってしまう化学物質を使わずに、子孫達に美しい地球を残していくため。
・化学物質による中毒と視神経の麻痺という事態に陥ったため。
・化学合成物質のない場所で、暮らし・働くため。また私たちの美しい大地を救い、守っていくため。
・私たちの環境を守るため。健康的な製品を販売したかったから。汚染されていない場所で暮らす喜びを追求したため。
どういう状態が自分にも、周りの人にも、環境にも幸せだろうかと考えた結果の選択と言えそうですね。これに答えてくれた農家の人々は、生産者として、自分たちこそ消費者の健康や幸せな暮らしの一部を担っていると考えています。もちろん、一方で消費者に対しての要望もあります。
・もしも消費者が、オーガニック食品を生産しているのは、自然を愛し、それに敬意を払う人々なのだということを理解すれば、オーガニック食品の将来は保証されると思う。
・もしも緑豊かな大地で暮らしたいなら、化学物質が少ない農業に立ち返る必要がある。このことを田舎に暮らさない人々だけでなく、別の理由で田舎にやってくる人々にもよく理解してもらわないといけないと思う。
自分の体をつくり上げているものであるのに、食品に対してあまり意識していない消費者が多いように思います。生産者任せにしてきたあげく、問題が起こってから大騒ぎする、そういうパターンから抜け出すためには、消費者側の働きかけや協力はなくてはならないものです。
思いを馳せてみましょう。その食品が育った環境を、土の香りを、大切に育ててくれた人々のことを。