vol.14 ゴミをゴミにしない生活
ニュースの中で廃棄物処理に関する話題を提供しましたが、オーガニック農場で生活を始めた最初のころ、何よりも驚いたことの1つは、ゴミが出ない!ということでした。
包装材、野菜のくず、動物や魚の骨、ビン・缶類、各種容器、紙・・・都会に生活していると、1人でもこんなに!というくらいのゴミが出てしまいます。いわゆるスーパー袋をお断りしたくらいでは、焼け石に水、といいたくなるくらい、何かを消費すると必ずゴミが発生してしまいます。
その概念が覆ったのが、オーガニック農場での生活でした。まず野菜くずや骨類などは、第一段階として家畜のえさになります。もともと自家で栽培しているオーガニック野菜ですから、いわゆる「くず」になる部分も少ないのですが、例えばにんじんの葉は馬に、鈴なりになって木からボロボロ落ちてしまった梨は豚に(甘くておいしいのでしょう。豚は梨が大好きです!)、インゲンのへたなんかは鶏に、と家畜たちも大喜びのえさになります。
上記のようなものは、家畜に与えないとしても、時間が経てば土に戻っていきます。例えば収穫時に一部が腐っていたり、小動物や虫がかじってしまった野菜などは、そのまま畑に放っておいても、微生物の力で還元されていきます。それを除いて、家畜も食べない、例えばレモンの皮などは堆肥の材料になります。わらや、家畜小屋から掻きだしてきた糞などと混ぜて一定期間おいておくと、発酵して分解し、良質の肥料へと変化します。つまり最終的に土に戻るものは、まずゴミにならないし、そうする必要もないのです。
手作りするものが多いので、空きビンもあまり出ないのですが、それでも数多く集まってきたビンは割れない限り捨てられることはなく、リユース(再利用)されます。野菜や果物が旬の時期には、大量に実るので、商品として出荷するのでない限り、当然消費しきれません。ジャム、ピクルス、トマトソース、煮物料理、野菜の水煮などなど、それ以外の季節に食べるために調理して、ビン詰めしておくのです。ビンだけではなく、プラスチックの容器なども、ふたがきちんとできるものは、タッパーウエアがわりにいろいろ利用します。これを知ってからは、私も空きビンを利用して、乾燥ハーブを並べたり、豆類をつめたりしています。ラベルをきれいにはがして、見栄えよくすれば人に手作りジャムをプレゼントしたりもできます。
紙類は敷地内で燃やすか、最近ではリサイクルペーパーを子どもたちとともに作ったりするのにも利用しています。こうして考えていくと、モノカルチャーの大規模農場ではない多様性に富んだオーガニック農場では、物質は循環するということがよくわかります。大地と水と生命がつながりあって生きていることも本当によくわかります。
「廃棄物、ゴミ」と言ってしまうと処理に困るやっかいものですが、土地を肥やし、食物や水、空気etc.と姿を変えてまた再び私たちの前に現れてくる要素でもあるのです。私たちが何をするべきなのか、何を求めるべきなのかが見えてくるように思うのですが、いかがでしょうか。