vol.13 子どもたちに伝えたいこと
毎年私が夏に訪れているフランスの農場には、宿泊客の子どもたちはもちろんですが、10日間くらいのスパンで何チームもやってくるキッズキャンプに参加する子どもたちもたくさんやってきます。その子どもたちの出身地はフランス全土に散らばっており、中にはスイスやドイツからやってくる子もいます。地方に住んでいる子もいますが、大部分は都会に暮らしている子どもたちなので、本当に何もない(と言っても手作りのトイレやシャワーなどはありますが)自然の中での体験によって得られるものは非常に大きいように感じます。
彼らが体験することは、いつも同じこと(乗馬、ロッククライミング、川遊び、動物の世話、料理etc)もある一方で、その年そこで働いている人や、キャンプであれば世話役をする学生たちの得意分野に応じて変わってきます。畑で働いている人とともに、道具を使って2時間くらいの畑仕事体験、リサイクルペーパー作り、野の草花を紙にきれいに貼り付けてカードを作る、小枝を拾ってリースを作る、楽器を演奏する、少し年長組みだと皮細工や洋服作りを行ったり、劇を創り上げることもあります。それぞれの人がもっているものを知らない人に伝えていく、これこそまさに教育なのだな、と感じます。先生はどこにでもいます。
畑には、数多くの野菜や果樹とともに、家畜の豚・鶏・羊の群れ、堆肥の山などが揃っていますから、子どもたちは残飯をもって動物の世話をし、畑で収穫を手伝ったりしながら循環を目の当たりにして過ごします。最初の日は、ゲーム方式で農場内の全ての場所に行くことになります。例えばオレガノとパセリを摘んできて!とか、キッチンの人に聞かないとわからない質問を用意したりとか、農場内の場所を知り、そこで働く人々と知り合いになれる、とてもうまい方法だと感じます。
いろいろやってみることで、子どもたちはあれは得意だけどこれはあまり、とかこういうことが楽しい!とかわかります。そして周りの友だちができること、できないことが見えるということは、相手を尊敬したり、苦労している人を助けようという思いやりの気持ちにもつながると思います。
また自然相手の体験も自分がそこに生かされていることに気づく第一歩であると思います。例えば昨年は大嵐が来て、テントも吹き飛ばされ、急遽体育館のような大きな部屋に移ってこざるを得ないことがありました。農場自体も5時間近く停電し、お客さんもみんな大変だったのですが、その間キャンプの子どもたちが思いを馳せた先は、例えば大洪水で家を失ったアジアなどの人々のことだったらしいのです。
こうした体験をもった子どもたちが多くなればなるほど、自然の大切さや恐さ、お金では買えないものの価値を本当にわかる人が増えていくことでしょう。法制度だけでは決して成立しないオーガニックがライフスタイルとして人々に根付くための1つの切り口なのではないでしょうか。