1. HOME
  2. オーガニック情報アーカイブ
  3. レポート:オーストラリアのオーガニック事情1
オーガニック情報アーカイブ

レポート:オーストラリアのオーガニック事情1

オーストラリアのオーガニック業界は、ヨーロッパ諸国に比べ歴史は浅いものの、現在、大変活発な動きを見せています。これから数回にわたって、オーストラリアのオーガニック事情を紹介します。

オーストラリアは、世界最大規模のオーガニック認証農地を保有しています。世界のオーガニック認証農地のおよそ32.6%を占める1,200万ヘク タールです。世界総陸地面積におけるオーストラリアの国土面積は5.2%ですので、オーガニック作付面積という側面から、オーストラリアのオーガニック度 が高いと言えます。

資料1: 世界のオーガニック認証農地面積と農産物以外のオーガニック耕地(2009)

FiBL & IFOAM Survey 2011

 

国土面積が世界の5.2%とは言え、オーストラリアは日本の21倍の面積を持つ巨大な国です。また、2000メートル以上の山は存在せず、平均標高は340メートルと起伏も小さく、一言で言うと、低い大地がただただ一面に広がる国です。人口は2280万人弱と日本(1億2800万人弱)の5分の1以下で、数字上は、人口密度の低い国です。しかし、実際は、自然環境が非常に過酷で、大地の40%が非居住地区(アネクメネ)であるため、都市部はかなり人口集中が激しくなっています。居住地区も土壌の栄養分が極めて乏しい、塩害が発生しやすい、降雨量が少ない、と悪条件が3つ加わるため、穀物、牧畜業、果樹生産など広範な分野においてオーストラリアの農業生産性は極めて低い、というのも事実です。

 

こちらで生活をしていると、水使用に関する注意勧告やブッシュファイアー(山火事)についての注意報などをよく耳にします。ここ最近では、クイーンズランド州の大洪水(2011年1月)やビクトリア州のブッシュファイア(2009年)など、大型の自然災害が起こっていますが、オーストラリア人は、「いつの日か起こる自然の脅威」としてではなく、日常的な感覚で、自然と向き合っていることを象徴していると思います。

 

オーストラリア国内を移動してみると、いたる所で乾いた貧弱な土壌を目にしますが、緑豊かな自然は、北東から南東の沿岸部(クイーンズランド州やニューサウスウェールズ州、ビクトリア州)やオーストラリア大陸南方海上に位置するタスマニア州に集中しています。これらの地域は農産物の生産が盛んで、オーガニック農産物の生産についても同じ事が言えます。オーガニック認証農地の面積、オーガニック農産物の企業の数、において、クイーンズランド州を筆頭に、これらの地域がオーストラリアのオーガニック産業をけん引しているといっても過言ではありません。逆に、砂漠地帯の多い西オーストラリア州やノーザンテリトリー州は、オーガニック牛の生産にたけているものの、オーガニック農産物の生産量は圧倒的に少ないです。

 

資料2: オーストラリアの地図

オーストラリア政府観光局ウェブサイトより

(地図はVisible Earth(http://visibleearth.nasa.gov/)作成)

 

オーストラリアを代表するオーガニック団体であるThe Biological Farmers of Australia (BFA)とUniversity of New Englandが発表した「オーストラリア オーガニックマーケットレポート 2010」によると、オーストラリアのオーガニック認定事業者の数は、洪水などの自然災害が原因で農業者数が減少した2002年から2007年の間も年平均で5.2%の増加を記録していましたが、2007年以降は平均4%伸びている、とのことです。また、オーガニック農家はオーストラリア全農家の1.6%を占めており、オーガニック農家は慣行農業を行う農家より平均年齢が低いそうです。

 

オーガニック市場に関しては、全世界のオーガニック市場の2%弱と決して大きなものではありませんが、オーストラリア国内のオーガニック製品とオーガニック農産物の売上高は過去2年で48%以上の伸びを記録しています。オーストラリアの全農産物に占めるオーガニック農産物の割合は、調査結果では約1%とされていますが、BFAのディレクターであるAndrew Monk博士は、オーストラリアのオーガニック市場は極めて活発で、実際の市場占有率は、EU諸国や米国並みの2.5%から3%に迫っていると見ています。ちなみに、日本の農産物総生産量に占めるオーガニック農産物の割合は、0.18%(2008年)にとどまっています。

 

オーストラリアのオーガニック農産物を生産量別に見ると、野菜、果物、牛肉がトップ3を記録し、次に鶏肉、はちみつ、乳製品、が続きます。乳製品とコスメティック部門の伸びが目立つ一方、ウール製品が売上を落しています。

 

オーガニック農畜産物の輸出内容は、2004年頃までは小麦などの穀物で一番多かったのですが、2004年を境に加工食品がトップとなり、その後、牛、植物油、豆類や穀物が続きます。最近ではワイン、はちみつ、乳製品の輸出の伸びが目立ってきています。
前出のレポートによると、オーストラリアの一般家庭の6割は、オーガニック商品を買うことがある、と答えているそうです。実際、オーガニック製品をいたる所で目にしますし、それはオーガニックショップだけでなく、大型スーパーはもちろん、規模の小さい個人経営のスーパーでも、たまたま手に取った商品がオーガニックだった、ということがあるほどなので、納得のいく数字ではあります。オーガニック商品の販売対象が、一部の客層のみではないことが分かりますね。

 

オーストラリアでオーガニック商品を手に入れられる場所は、大型スーパーマーケット、オーガニックスーパーや決まった曜日に開催される市場、また週末に各地で開かれるファーマーズマーケットがあります。大型スーパーマーケットは、オーガニック商品の売上高の60%をも占めているそうです。

 

大型スーパーマーケットでの売上高が60%を占めるというのは、かなり高い数字に思われるかもしれませんが、これには、オーストラリアの特殊な小売り事情が関係しています。2大スーパーマーケットであるWoolworthとColes(親会社Wesfarmers)が国内小売業の約80%の売上を占めています。彼らのマーケティング方針により、市場が大きな影響を受けることは想像に難しくありません。2009年にWoolworthがオーガニックスーパーのチェーン店の「Macro」を買収し、Macroを自社のオーガニック・ナチュラルブランドとして販売を開始してから、Colesはもちろん、独立系チェーン展開をするスーパー、インディペンデント・グロサーズ・オブ・オーストラリア(IGA)やドイツ系ディスカウント・スーパーのALDIも追随し、スーパーマーケットにおけるオーガニック商品の投入率が一気に上がりました。WoolworthとColesでは、セレブシェフが商品のPRや、彼らがプロデュースした商品を販売するなどしていますが、オーガニック商品の宣伝にも彼らが関わり、オーガニックムーブメントを盛り上げています。

 

これらスーパーマーケットによるオーガニック普及への貢献度は確かに高いかもしれませんが、この2大スーパーマーケットによる独占状態には、疑問を投げかける声も多くあります。農業組合等の関係者らは、生産者に低い出荷価格を強いて生産者を苦しめる一方、2企業の独占は無競争市場を招き、結果的には消費者に不利益を生じさせる、と危機感を募らせています。これは、連邦上院特別委員会やオーストラリア消費者競争委員会(ACCC)議会でも度々議論されてきた件なのですが、昨年初めに繰り広げられたColesとWoolworthの自社ブランドの牛乳の値下げや、最近ではColesが青果物の価格引き下げを発表したことからも分かるように、この傾向は加速するばかりです。

 

確かに、消費者として、オーガニック商品をスーパーマーケットで手軽に購入できるのは喜ばしいことです。しかし、大手スーパーマーケットのオーガニックマーケット市場参入により、生産者や消費者はもちろん、同業者が必要以上に打撃を受けるのであれば、オーガニック産業の発展にとって大きな問題です。スーパーマーケットではなく、オーガニックスーパーや市場、週末のファーマーズマーケット、またエコパークなどを利用する消費者は、当たり前のようにこの点を理解しており、単に「安くて新鮮なものが欲しい」という一方的な欲ではなく、「生産者を出来る限り支持しよう」という姿勢を持ち、持続性のある社会の一環としてオーガニックをとらえている様子です。

 

少し固い内容になってしまいましたが、オーストラリアのオーガニック事情の全体像をつかめていただけたのではないかと思います。次回は、オーガニックスーパーや市場、ファーマーズマーケット、エコパークについてです。

 

記:越川 加奈子さん

 

参考資料

Organic Agriculture Worldwide Key results from the global survey on organic agriculture 2011, Helga Willer, Research Institute of Organic Agriculture, FiBL, Switzerland

 

Australian-Organic Market Report 2010, the Organic Research Group, School of Environmental and Rural Science, University of New England (UNE), Armidale, NSW, Australia and Mobium Group, Melbourne, Australia, 2010

 

Australian Organic Market Report 2008, Organic Research Centre, University of New England (UNE), Armidale, NSW, Australia

 

Global statistics of the Organic Market, Brian McElroy, IFOAM Representative for the Ecological Farming Conference January 25th 2008

 

The US Organic and Natural Food Product Export Initiative

A Guide to Exporting Food to Australia, Interunion Marketing (AUS) Pty. Ltd., 2005

 

The Market Opportunity for Organic Products in South Australia, Government of South Australia, 2003

 

The Guide to Ethical Supermarket Shopping 2011, The Ethical Consumer Group Inc, 2010

 

CleanFood Organic Yearbook 2011, McGuireGuides, November 2010

 

オーストラリア政府観光局ホームページ

 

「有機農業の推進について」 生産局農業環境対策課, 農林水産省, 2009

 

「有機JAS制度を巡る現状について」, 有機JAS企画に関する意見交換会, 2010

オーガニック情報アーカイブとは






オーガニックワイン 桜ロゼ

創立記念オリジナルワイン

アーカイブ一覧

月を選択

公式Facebook

20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。20歳未満の方への酒類の販売はいたしておりません。
妊娠中や授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に悪影響を与えるおそれがあります。