vol.19 オーガニックの畑、一般の畑
昨年に引き続き、ワインを造るためのぶどうの収穫に出かけてきました。
今年は、ボジョレーヌーヴォーで日本人にもすっかりお馴染みのボジョレー(フランス南東部、ブルゴーニュの南)にて。昨年行ったボルドーはグラーヴ(フランス南西部、大西洋岸)とは、気候も、育てているぶどうも、土壌も、人々の気質さえ全く違います。
例えば、グラーヴは大西洋岸気候、ぶどう畑は平面が多く、土壌は砂状が中心。これは造り手の慣習によるところが大きいですが、収穫は村の人にお願いして手伝いに来てもらいます。
一方今年訪れたボジョレーは、雨の量も適度にあるお陰で(ぶどうには必ずしもいいとは言えませんが)緑濃く、訪れたときの印象は全く違いました。畑も急勾配、なだらかを問わず斜面が多く、石ころだらけの土壌です。収穫メンバーも古くからずっと来ている人から新しい人まで、国籍も非常にバラエティに富んでいます。全員が泊り込みで約10日間、集中して一気に収穫します。
このように、土地が違えば、畑も、できるワインも全く違う、わけなのですが1つ共通していることがありました。それは、まわりの畑と目を見張るほどの違いがあることです。
EUOFAでは、オーガニックとそうでない畑との違いを示すために、講演会や展示会でよく冬のある一日のオーガニックと一般の畑の写真をお見せすることが多いのですが、この差は本当に歴然としています。今年収穫を行ったボジョレーでは、肥料は一切与えず、畑に生えてきたぶどう以外の植物だけが土の栄養分となります。ぶどうの栽培という、どうしてもモノカルチャーになってしまう状態を少しでも避けようと、たくさん生えてくる雑草をむしろ歓迎しているのです。周りの畑と比較して、ここは草がボーボー。収穫のときには、足でエイっと邪魔な草を踏みつけてからしゃがみこまなくてはなりません。前に進みにくいくらい生えています。ここの土地は前述のとおり石ころだらけのはずなんですが、それが見えないほどです。
そんな畑には、てんとう虫やクモ、様々な昆虫の他、なんと鳥が巣を作っていたり(これにはみんなも本当に驚きでした)、野ウサギが飛び出してきたり。昨年の春には鹿の子どもも生まれたそうです。
一方、お隣りの畑には見事なまでに見渡す限りぶどうしかありません。土の表面がむき出しになっています。この状態で、土はどうなっていくのだろうと心配してしまいます。森を想像すればわかるとおり、土は動植物の死骸が微生物に分解されることによってできていきます。動植物の死骸も、微生物もない畑では、理屈からいうと土が新たに作り出されることはありません。化学肥料によって、ぶどうは栄養を取ることができるかもしれないけれど、それを支える土の力は・・・想像に難くありません。
生命に満ち溢れたこの畑には、動植物だけでなく人もひきつけられるようです。従業員の一人は、昨年の収穫時にここにやってきて、すっかりこの畑にほれ込んで住み着いてしまった、というエピソードをお持ちでした。
(今年訪れたオーガニックボジョレーのドアット家での収穫日記にご興味のある方は、こちらからどうぞ)