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グループ認証で小規模農家の自立促進(2)

グループ認証で小規模農家の自立促進(1)の後編です。

1990年代にはすでに様々なグループと認証者たちが自発的に認証にかかる費用と時間を削減するための内部統制に基づいたグループ認証システムをつくり、中には政府が制定したオーガニック規則より前に実行されていたものもある。のちに、 IFOAM(国際有機農業運動連盟) は世界的なオーガニックの大幅な高まりを受け、グループ認証の概念を調和する重要な役割を果たすようになった。これらのシステムはオーガニック基準に準拠している事を保証し、グループの中心によって管理される内部制御システム(ICS)を実施する事が求められる。この中央団体は適合基準が守られている事を保証し、内部制御システム(ICS)を実行している事、グループが作る製品のマーケティングを調整する事への責任を担う。

内部制御システムが実施される時には、ひとつのグループはひとつの生産単位とみなされる。そのグループの内部制御システムがきちんとと機能していれば、第三者の認証団体が総括してそのグループを視察、認証し、グループが運営する共同の製法や管理業務、ならびに個々の生産者すべてに対して一つの認証を発行する。2003年、IFOAM はEUに、‘オーガニック商品の生産と製法に関する小規模農家グループ認証の状況’ を提出した。内部制御システムの国際部門が、EUの要求事項に合意したことが資料にて示され、その結果、IFOAMによって規定された基準の大部分を満たしているグループ認証のEU認可へとつながった。2004年、IFOAMは小規模グループ認証のための内部制御システムで用いるトレーニングキットを発表した。これらの資料は現在もグループ認証に関わる人々にとって主要なツールである。

現在、グループ認証は、小規模農家が認証オーガニック農家となり、世界のオーガニック市場へのアクセスと、利益を上げる機会をつくる、強力な手段である。この概念は関連規則で容認されているが、どの規則にも正式に組み込まれたことがない。だが、オーガニック規定やアメリカの国際オーガニックプログラム(NOP)のガイダンス・ノートに記載されていることから、概念についての認識はされている。

将来、グループ認証の選択肢を維持するためには、引き続き努力が必要だ。この問題を規制機関に対して働きかけることも大切だが、関係者達にとっての真の挑戦とは、グループ認証の要求事項に沿った、効率良く調和の取れた内部制御システムの実施である。グループの内部制御システム実施は手間のかかる仕事で、該当する内部制御システムの要求事項に沿った内部機能の継続的な管理、実施と文書化を伴う。特に内部統制、認証、修正措置のワークフローは懸念事項である。

グループ認証者たちの実施内容と同様に、グループの成果にも大きなばらつきがある。内部制御システムを批評する側も当然この事に苦言を呈している。内部制御システムを実施している組織グループから申請され、適応される統制方法に一貫性がない。このことから、第三者機関による再監査の比率を増やす為に2つの主な監視機関(the NOP/ EU )が導入され、そのことで金銭的な負担も増える結果となった。EU規則の改定に至るまでに、栽培者グループの内部制御システムを全てなくしてしまおうか、とまで議論された。費用の高騰や栽培者グループを認証するというコンセプト自体をなくすという憂慮すべき徴候もあり、小規模農家がオーガニックマーケットに参入するのが更に難しく(コンセプト自体をなくすのであれば、事実上参入は不可能に)なるだろう。

IFAD, FAO, UNEP を含む様々な組織や開発・輸出機関は小規模農家をサポートする事に大変好意的であり、それに対して具体的な手段をとっている。しかし、より多くの活動や、特に道具などが、関連するマーケットへの安定した参入を確立するサポートができる、堅実で安定したグループを作るために必要とされている。このギャップを埋める為に新しい構想が打ち出されている。 国際コンサルト会社であるOrganic Servicesは、認証団体であるCERESと共同で小規模農家組織を農家として職業化するツールであるグループ・インテグリティ(Group Integrity)を開発した。他の認証団体(Instituto Biodinamico、国際海事機関:IMO(International Maritime Organization) 、 Naturland協会を含む)もその開発に参加した。グループ・インテグリティは自主的組織グループや、契約農業ベースで小規模生産者と手を組んでいる事業が、ICSをより良く管理できるようサポートしている。

グループ・インテグリティは、モジュール式の包括的ワークフローに基づいた監査と、認証、顧客関係管理を行う電子証明書と、認証団体の管理ツールを作り、世界中で広く利用されている。このソフトウェアは、グループで使用するのにふさわしく、より手ごろな価格の軽いバージョンを作るために簡素化された。その開発には、ドイツの経済開発機関であるドイツ投資開発会社 (Deutsche Investitions- und Entwicklungsgesellschaft mbH)が共同で資金を供給し、官民協力パートナーシップのサポートを受け、現在もそのサポートを受けている。

グループ・インテグリティは、内部統制プロセスのワークフローに的を絞ることにより、グループが様々な基準の複雑な管理と文書上の要求を満たす手助けをしている。 農家や作物、修正措置のリストなどのレポートを含む効率の良いデータベースで管理されており、データと同様に、第三者認証機関が求める情報の提出を簡略化するデータ出力機能もある。このシステムは、データの紛失や紙の資料での検索といった問題を無くし、データが最新でいつでも入手可能であることを保証する。このことで、例えば管理者や担当係が変わることでグループ管理システムに支障をきたすのを避けられる。その結果、グループの安定性と信頼性が向上し、価格を抑え、むしろ低価格にすることができる。グループ・インテグリティは多言語対応しており、インターネットを通して世界中からアクセス可能だ。インストールの必要はない。システムは定期的にアップデートされ、主要なオーガニック基準(例えばEU、米国、日本、Naturland、Bio Suisse、Demeterなどの基準)や持続可能性の基準(例えば農業資源維持ネットワーク(SAN)、フェアトレード、UTZ Certified、グローバルギャップ)を満たすための統制ポイントや指標を示した全世界対応の検査チェックリストを備えている。その他の基準や言語も今後追加されていくことだろう。

グループ・インテグリティは地元や地域の実行パートナー(IPs)を通して行われる。実行パートナーがいないところでは、Organic Servicesが直接行う。実行パートナーは栽培者グループを支援し、トレーニングを提供している(彼ら自身はOrganic Servicesからトレーニングと援助を受けている)。

実行グループは現地の言葉での迅速なサービスとサポートを保証する最適な手段であり、現地の状況をより詳しく知っている。

国連総会は2014年を ‘国際家族農業年’にすると宣言した。我々は、グループ・インテグリティが発足することで、世界中の小規模農家の生活改善に貢献できることを願っている。そして、共により良い仕事ができ、地元や地域、国際マーケットにおける彼らの立場を強くできるよう希望している。また、食の安全の向上と、地方の経済や生物多様性を支えるのに役立ち、小規模家族農家の先々の世代に伝統的なシステムと知識が生かされ続けるであろう。

筆者詳細:ジェラルド A.ハーマン とマイルドレッド スティードル はドイツの国際マネジメント・戦略コンサルタント業者、Organic Servicesの取締役

グループ・インテグリティの機能と権限についての詳しい情報は、 グループ・インテグリティHPかOrganic ServicesHPをご覧ください。(両方とも英文です)ジェラルド A.ハーマン とマイルドレッド スティードルによる記事の長文バージョンはEcology and Farming で出版されました。

翻訳ボランティア:秋山 藍子

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