特別寄稿: BioFach2004に見るオーガニック食品の現状と今後
木村 麻紀(ジャーナリスト、在ミュンヘン)
世界最大級の有機農産物・加工品見本市「BIOFACH 2004」が2月19日から4日間、ドイツ南部の都市ニュルンベルクで開かれた。
今年は67ヶ国約1900の企業・団体が出展。会場には、通常の食料品並みに品数が多様化した有機食品がずらりと並んだ。シンポジウムでは、有機食品市場の成長が今後も続くとする業界予測が示される一方、今夏にも予想される欧州連合(EU)による遺伝子組み換え(GM)食品の栽培・販売解禁が近づく中で、欧州の有機農業に与える悪影響を懸念する声も聞かれ、有機食品の将来をめぐって明暗が交錯した4日間となった。
▼ 北米・アジア市場が好調
最新統計によると、有機認証を受けた農地は世界で2300万ヘクタール(1995年比で45%増)、2002年の有機食品市場は前年比10.1%増の230億ドル(約2兆5300万円)に達し、有機農業と有機食品市場が世界的規模で拡大し続けていることが改めて確認された。
英コンサルタント会社オーガニックモニター(本社ロンドン)は、90年代を通じてEUレベルでの有機農業支援が行われてきた欧州で、乳製品や肉類など一部品目で供給過剰が起きていると指摘。そこに、通常の食品同様に安売りを謳い文句とする有機食品専門スーパーの登場や不況の影響も重なり、成長率が鈍化していると分析した。
逆に、米国や日本を中心とした北米・アジア市場は12−15%伸びたという。消費者の食の安全性に対する不安や健康意識の高まりを背景に、こうした傾向は今後も続くとみられ、同社は2003年の世界の成長率を約8%と予想している。
シンポジウムではこのほか、有機食品が通常の食品よりも栄養価・健康への影響という点で優れていることを示唆する研究結果が出始めている現状も紹介され、関係者の関心を集めていた。
▼ GM解禁間近に危機感
一方、出展した有機農家団体の間からは、EUレベルでGMが解禁されれば、GM種子や花粉の飛散に伴う“農地汚染”によって、有機農業、ひいては有機食品市場そのものが成り立たなくなる可能性があるとする意見が数多く聞かれた。
旧東ドイツ地域の有機農家を中心に構成するGaea(本部ドレスデン)の担当者は、EUレベルのGM解禁に対応する独国内法として閣議決定された「遺伝子技術法案」(仮称)に関して、汚染の立証責任を有機農家に負わせた点が問題だと指摘。その上で「汚染の有無を常に監視するのはあまりにもコストが高く、(GM解禁は)小農家の多いわれわれのような団体の存亡に関わる」と危機感をあらわにしていた。
今年5月にも決定されるEU有機農業アクションプランに関するシンポジウムでは、「GM農業と有機農業の共存を目指す」とするEU側の説明に対し、出席者から「GM種子を使わないよう農家を指導することもアクションプランに盛り込むべきだ」など厳しい対応を求める意見が出て、有機食品市場をリードしてきた欧州の有機農業が重大な転機を迎えつつあることを印象付けた。
▼日本食材アピールの好機
有機食品の消費市場としては成長する日本だが、生産、加工、小売りとなると欧州や成長著しい米国にはまだまだ及ばないのが現状だ。
こうした中、EUの有機農業基準をクリアした鹿児島市近郊の茶畑で栽培された日本茶を欧州数カ国に輸出する「下堂園」(本社鹿児島市)は、付加価値を高めた日本食材の輸出で成果を上げた好例として会場で目を引いた。
欧米人の健康志向は高まる一方で、日本食材をアピールするまたとない好機が到来している。付加価値を高めて国内外の有機食品市場に打って出る、意欲あふれる生産者や加工業者の登場を期待したい。
※タイトルは事務局にてつけさせていただきました。