vol.03 オーガニックな人ってきっとこんな人
フランスに行っていたはずの私ですが、このコーナーはドイツ、スペインとフランスではない国々から始めてしまいました。第3回目にしてようやくですが、フランスの話をしたいと思います。
今年私は、オーガニックのワイン製造を行っている農家でぶどうの収穫をしてきました。そこは77歳になるおばあさんが1人でやっているところで(従業員はもちろんいますが)、農薬や化学肥料を使うことを考えたこともない、ずっとずっとオーガニックでやってきた農家です。
大規模な畑になればなるほど、外国人労働者やフランス全土からやってくる「収穫者たち」の割合が高くなっていくのですが、彼女の畑では昔どおり、村の人たちが手伝いにやってきてくれます。皆さん毎年参加の方が多いので慣れたものですが、初参加の私はもう本当にクタクタになりました。ぶどうの実というのは、私の腰からひざくらいの位置になっており、それを摘むには腰を折るかしゃがむ、ひざをつくという姿勢を取るしかありません。長い一列が終わるとようやく普通に立つことができますが、またすぐに次の列開始。朝一番は露がきらきらして、本当においしそうなぶどうが、夕方にはただの青い物体にしか感じられないほどです。
畑にはもちろん、草がたくさん生えており、摘んでいるとクモが腕を這っていて「あれ〜」というようなこともたくさんあったのですが、もちろん彼女が実践しているのは、ぶどうのオーガニック栽培だけではなく、生活自体がオーガニックなのです。というか、先週のスペインのホセさんの話ではありませんが、自分自身の生き方がオーガニックでないのに、オーガ ニック栽培だけする、ということはあり得ない、そんな風に感じられました。
自分の庭に小さな菜園を持っているから、野菜は全て自家製。そのレタスもねぎもジャガイモも、みんなちゃんと野菜の味のする野菜でした。庭に生えている果樹は、とても食べきれないのでジャムに。パンは毎週近くの村のマルシェにやってくるオーガニックパン屋さんに注文しています。紙のごみは庭で燃やしてしまうし、野菜のくずなどは菜園に戻して自家製肥料。ゴミ袋に入れて捨てに行かなくてはならないゴミ、は本当にほとんどないのです。
最後に彼女が言った中で一番印象に残っているセリフをご紹介します。「人は持っているものが多ければ多いほど、取られるのが恐くて、どんどん閉じていって、人が信じられなくなってしまうのね。オーガニックをやっている人は決してお金持ちではないかもしれないけれど、訪ねれば必ず温かく迎えてくれるわよ。人と分かち合うことが好きなのね。」
全くそのとおり、と思ったのはきっと私だけではないでしょう。