農薬を拒んだために裁判に
出典:lemonde.fr
エマニュエル・ギブロ氏は、ブルゴーニュ州のコート・ド・ボーヌ地区とオート・コート・ド・ニュイ地区に、10ヘクタールのバイオダイナミック農法によりブドウ畑を経営しています。この51歳のブドウ栽培者は、シャルドネとピノ・ノワールのブドウの苗に、ピルベールという危険な殺虫剤を使用することを拒んだだめに、まもなく裁判に呼ばれることになっています。Bastamugのサイトにあるように、最長6か月の禁錮刑と最大3万ユーロの罰金が科されます。
なぜこのような不条理なことが起きたのでしょうか。6月、県法令によりコート・ドール県すべてのブドウ園に対して、均一に殺虫剤を散布する処置が課されました。目的は、フラべセンス・ドレというブドウにとって致命的な伝染病の原因ある小型害虫ヨコバイです。伝染病は1950年代からフランス中に広がり、今日では半分以上のブドウ園が国家・欧州規制による強制対策計画に従っています。対策としては、苗を見張る、熱湯処理した若いブドウの株のみ使用する、感染したブドウの木の根株を抜く、化学処理により害虫を駆除する、などがあります。
初夏、コート・ドール県で発症は確認されませんでしたが、一部の苗の感染が疑われました。さらに、隣県ソーヌ・ロワールは2011年より感染し、3度目の伝染病対策活動をしています。そのため、県庁はヨコバイに対する化学的対策を命じました。
「県内に感染の事実がないのだから、この融通の利かない処置を拒否したんだ」とエマニュエル・ギブロ氏は言います。「根株が感染して症状が現れるまでに少なくとも1年のずれがあります。感染してからでは遅すぎるのです」と、フラべセンス・ドレ対策担当であるブルゴーニュ州州食品農林局の食品部門代表オリビエ・ラポトル氏は反論します。「感染した土地では、伝染病の蔓延は年々激しく、冒されたブドウの木の数が十倍に増加するほどなのです」
「1970年からオーガニック農法で耕してきた土地に化学製品を使いたくなかったんだ」と、多くのブドウ園経営者が直面するジレンマを強調しながら、エマニュエル・ギブロ氏は続けます。オーガニック農法ブドウ栽培者にとって、そのラベルを保ちながらヨコバイを退治することができる唯一の殺虫剤は、乾燥したキクの花エキスである自然ピレトリウムを主成分とするピルべールです。「この殺虫剤は無差別なんだ。つまりヨコバイを殺すだけでなく、ブドウ園の自然調和を補助するために必要な生き物をも殺してしまう」とブドウ栽培者は非難します。「例えば、ブドウの木の樹液を吸う赤蜘蛛を捕食するダニ、ティフィロドロームを殺してしまうんだ」
「ピルベールが自然由来だとしても、使用量によっては虫だけでなく、鳥や動物、ブドウ栽培者にまで影響を与える神経毒なのだから、環境に有害なのです」とフランス国立農業研究所ブドウ栽培耕地衛生・農業環境班長のティエリー・ドニ氏は認めます。「実際のところ、自然栽培でも慣行栽培でも、フラべセンス・ドレ対策の処置は最善とは言えず、すべての害虫を殺すことはできないのです。ヨコバイはよく移動するため、伝染病は急速に広まり続けます。ただ、すべての伝染病同様に、処置しないと状況が悪化するかどうかはわかりません」
7月30日、州食品農林局に違反行為で取り締まりを受けたエマニュエル・ジブロ氏に、ボーヌ地区小審裁判所共和国検事代表のもとへの出頭命令が出されました。規制された動植物由来の病気対策の県法令違反は、農業法典違反とみなされます。11月12日に予定されていた出廷は延期され、まだ日時は決定していません。
昨年6月、同じように法律違反をしたヴォクリューズ県の自然農法ブドウ栽培者は、違反行為の有罪が宣告されました。しかし、ブドウ園に植物衛生処置をすることを認めたのちに、免罪されています。
2014年3月15日
翻訳:勝矢 あゆみ