EUのGM大豆承認に対する告訴
欧州委員会がモンサント社の開発した新しい遺伝子組み換え (GM)大豆を承認する決定を下したことに対し、社会・環境責任に向けた科学者の欧州ネットワーク (ENSSER)など、複数団体が告訴に踏み切った。当該の大豆のほとんどはIntactaの商標でブラジル国内で販売・栽培され、収穫された大豆は食品と飼料向けとしてヨーロッパに輸入される。
この新GM大豆は、殺虫効果のあるタンパク質を発現し、ラウンドアップとして知られる除草剤グリホセート耐性を有する。本年6月末、欧州連合はこのGM大豆を食品と飼料に使用することを承認したが、欧州食品安全機関 (EFSA)は、この製品に対し、法的に定められたリスク評価を行っていない。この事実は、Testbioteckがまとめた技術調査書類と、委員会に提出される法的調査書類からみても明らかだ。告訴はEU規則1367/2006に準拠して申し立てられた。これはつまり、ゆくゆくは欧州司法裁判所が関与してくる可能性を意味する。
「EFSAは、遺伝子組み換え作物のリスク評価をただ簡易的な手法で、非常に表面的にしか行っていない。さらに、欧州委員会は、流通許可の管理という自己の責務を果たしていない。現在行われている手続きは、既存のEU規制と完全に矛盾している。この告訴は、委員会とEFSAに対して、消費者と環境の保護をもっと重視するように圧力をかけるものだ。」と原告側はTestbioteckに語った。「EFSAが実施したリスク評価のデータ分析によって、アレルギーを起こす危険性や併用効果など、重要なポイントが十分に考慮されていないことが分かる。その結果、消費者にとって高レベルの危険を引き起こしている。」
訴状には以下の争点が含まれる:
殺虫剤の散布と併用効果から生じる作物の残留農薬が調査されていない
EFSAが作成したいくつかの文書では、幼児や、アレルギー反応の影響を受け易い他の消費者層に関して、遺伝子組み換え作物の特殊なリスク評価の必要性を強調している。しかし、「意見」の項目では、EFSAはこの問題を完全に無視している。
モンサント社が提示した調査書類を見れば、この会社が医薬品安全性試験実施基準(GLP*) を順守していないことは明白である。
欧州委員会は、EU規則で義務づけられた健康影響に関する市販後調査を要求していない。
アメリカと違い、欧州ではGM作物は主として動物の飼料のみに使用されている。
欧州では、ほぼすべての食糧生産者が遺伝子組み換え作物の栽培を回避する決定を下している。しかし、欧州の認可は食品や飼料への使用はすべて認めている。これはつまり、例えば、ベビーフードの製造業者は、独自の基準を変更してGM大豆を使用することができる、それ以上はどんな許可も取る必要はないということだ。これが、流通許可を与える前に、EFSAがリスク評価を実施しなければならない理由だ
EU指令2001/18ならびにEU規則1829/2003など、EU規則の必要条件条項には、遺伝子組み換え作物の市場流通は、可能な限り高水準の科学的評価を行った後にのみ認可されるべきである、と書かれている。今回の告訴は、この必要条件の実施を強化することを目的としたものだ。
さらなる詳細は、ここから入手可能
*Good Laboratory Practice : 医薬品安全性試験実施基準◆【略】GLP◆医薬品の安全性試験の実施において、高い精度を維持するための管理基準
出典:Testbiotech
Organic-Market.info
(翻訳:ボランティア 大畑 恵里さん)