ロシアのオーガニック・コーポレーション
ロシアの「オーガニック・コーポレーション」はユニークなプロジェクトだ。この会社はロシア・オーガニック市場のパイオニアであり、ホリスティックな(総体的な)概念に基づいている生産者兼流通者である。さらにモスクワ市内で2つのスーパーマーケットを経営し、2006年の創業以来、オーガニック部門を発展させ、環境と調和した健康なライフスタイルを促進するために従事している。乳製品ブランドとしてオーガニック認定を受けたロシアで最初の会社でもある。
消費者教育に割かれた時間やエネルギーが少ないため、ロシア人とオーガニック製品のつながりを創成するのはいまだ容易ではない。さらに、企業にとって適切なトレーニングの土壌がなく、オーガニック生産関連の規制も存在しない。企業家は相変わらず、政府の適切な関与なくして商業的にビジネス経営を継続することは困難である、と結論づけることを余儀なくされるだろう。それでも、ロシアの人々は他のヨーロッパ諸国と同様に、健康なライフスタイル、健全な食物、そして環境を気に掛けているのだ。
オーガニック・コーポレーションが2006年に創業した理由はここにある。この会社は現在と未来の両方にフォーカスし、 人々の身体的かつ心の健康を改善し、自然のバランスを維持することが最重要課題であるとみなしている。
この会社の事業はあらゆる点で総体的だと考えられる。モスクワ近郊の酪農会社、Spartakでオーガニック生産と EtoLeto商標での加工が行われ、製品の流通は EcoProduct商社が行う。そして、モスクワ市内にBio-Marktと呼ばれる2つのオーガニック・スーパーマーケットを経営している。従来型スーパーマーケットではオーガニック製品はほとんど取り扱っておらず、このロシア随一のオーガニックスーパーのチェーン店が、オーガニック製品の買い物を一カ所で済ませられることを現実に可能としている。Bio-Marktはヨーロッパ中から取り寄せた最良のオーガニック製品を販売し、商品の分類を定期的に丹念にチェックしつつ常に拡大させている。3,500品目以上の商品を取り揃えており、たとえば、ドイツからSchedeのパン、Voelkel のジュース各種、 Elkershausenの青果物、 Gepaチョコレート、Martin Evers Naturkost 製品、Dr. Hauschkaのコスメティック、 ニュージーランドから Living Nature コスメティック、フランスからCoslysやEmile Noelといった具合である。
Bio-Marktでは乳製品の他に、食肉、鮮魚、冷凍食品、大豆製品、ナッツ類、乾物やジャム、きのこ類、はちみつ、食用油、穀類、マメ類、砂糖、紅茶、コーヒー、ココア、菓子類、ハーブ類、スパイスなど、EtoLeto商標の製品も一緒に販売されている。ペット用品、おしめ、おもちゃ、洗剤、顧客の希望に応じた各種詰め合わせも取り揃えている。各店舗内には化粧品スタジオがあり、幅広い品揃えの自然化粧品を置き、さまざまな付属品と共に包括的なアドバイスを顧客に提供している。
オーガニック・コーポレーションは職人技の製品を優先させている。たとえば、 チョコレート職人は製造にベルギー・チョコレートを使用し、顧客は自身でトッピングを選ぶことができる。パン屋は木製の製粉機を使って麦粒を製粉し、コーヒーショップではシェフが国際的な料理に加え、ロシアの伝統料理を調理する。Bio-Marktでは、顧客がゆったりとくつろぎ、待ち合わせをしたり、情報を得たり、快適に過ごすための場所として店を提供したいと願っている。
店のスタッフは、顧客からの質問が原材料についてだろうが、特別な食事法についてだろうが、あるいは単にオーガニックの食物を楽しむことについてだろうが、あらゆる質問に答えられるようよく訓練されている。会社の大切な目的はある種の空気を生み出すこと、つまり、オーガニックとは健康的な食物の選択という意味だけでなく、ライフスタイルを表現するものでなければならない、という空気である。そのため、店舗内の装飾は明るいオレンジ色で、自然素材でできた調度を使い、買い物かごは柳材でできている等、 環境にやさしいライフスタイルがすべてに反映されている。
シェフ、菓子屋、チョコレート職人による定期的な試食とコース料理の提供、栄養士による講演、アユールベーダを専門とする医師あるいは小児科医などが、消費者教育において重要な役割を果たしている。さまざまなイベントを開催し、「健康の日」、「子供の日」、「クリスマス・マーケット」など特定のテーマについて取り上げている。Bio-Marktでは特に子供たちに焦点を当てており、他店で見かけるプラスチック製のおもちゃの代わりに、柔らかいコットンでできたおもちゃを取り揃え、穀物を製粉機で製粉する工程を子供たちが見学できるようにし、コーヒーショップでは小さな子供用に特別メニューを提供する。オーガニック食材からパン生地を作ったり、絵を描いたり、折り紙を作ったり、食用色素でチョコレートをデコレーションしたり、お祭りをしたり、子供たちが楽しみながら環境について学べるように手助けしているのだ。
オーガニック・コーポレーションの流通会社であるEcoProduct 商社は、ロシア国内のオーガニック市場を発展させるうえで非常に重要な役割を果たしている。商社の主な目標は、ロシア国内におけるオーガニック製品の供給力を増加させること、また平均所得層の人々が購入できる価格でオーガニック製品を提供することである。今日、EcoProduct商社が取り扱うすべての商品群は実に1500品目以上からなり、これには食品、化粧品、家具調度品、そして、もちろん自社ブランドであるEtoLeto傘下の商品も含まれる。ロシアのオーガニック市場の主な仕入れ先は依然ヨーロッパの生産者であるため、オーガニック・コーポレーションの倉庫はドイツにある。つまり、需要にすばやく対応でき、要求された量の商品をできるだけ短時間で輸入できるようにしているのだ。
2006年、モスクワ近郊のある農場で、 Spartakというプロジェクトが開始された。Spartak はロシアで初めてオーガニック・ガイドラインに従って認証を受けた乳製品製造所だ。スイスからの専門家の助けとBio Inspectaからの (2008年の協定に基づいた) 認可と定期検査を経て、2009年7月、Spartakは転換中の会社であるという国際的認証を受けた。2010年夏にはオーガニック乳製品の最初の製造ラインが始まり、モスクワ市内の店の棚に並び始めた。
Spartakブランドの概念は、オーガニック製品であるためのすべての要求を満たしている。ガラス容器に入った高級商品が透明性の高い(公正な)方法で販売されている。今のところ、EtoLetoブランドの牛乳、サワークリーム、ケフィア 、カードチーズなどが購入可能である。
オーガニック・コーポレーションが重きをおくのは、自社のすべてのレベルのスタッフが共通の利害を追求し、会社の基本理念に則って行動することだ。勉強会とクラスが企画されており、スタッフはオーガニック生産についてより深く学ぶために Spartakに研修に行き、ヨーロッパやカナダのオーガニック企業へのスタッフ訪問を準備している。各従業員は、オーガニック・コーポレーションで就業を始める前に、オーガニック規格、オーガニック生産の特徴と方法論、製品範囲について学ぶことを要求され、また、環境と人間の健康を配慮し、促進するという、会社の理念に賛同していることが条件づけられる。
出典:Organic-Market Infoより
(翻訳:ボランティア 大畑 恵里さん)