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オーガニック情報アーカイブ

ペルーのオーガニック

ペルーは、他の赤道直下の国々とは違い、単に熱帯の気候だけを持つ国ではない。アンデスとフンボルト海流の影響で国内に大きな多様性が生まれているのだ。それゆえ、ペルーは高い生物多様性を持ち、ペルー政府はその保護のためにいくつかの保護地域を設立している。このことはオーガニック農業にとっては大きなチャンスになっている。多くの小規模な生産者は化学肥料や殺虫剤を使ったことがなく、彼らの生産品はオーガニック市場の基本条件のひとつを満たしている。


多種の野菜や動物の選別から管理に至るまで農業の伝統的な歴史があるため、ペルーでは幅広い種類の生産物を飼育・改良することが可能であった。そのほとんどが原産のもので、一年中様々な作物を育てることが可能である。2005年には、およそ274,000ヘクタールの土地でオーガニック農業が行われていた。2007年には275,000ヘクタールに増え、全農業用地の15%を占めている。この内85%の土地が既にオーガニック認証をうけており、15%は転換期にある。2008年には約35,000人のペルー人農家がオーガニックのガイドラインに沿って働いている。
2008年にはペルーからの輸出は1億9400万米ドル(約184億円)に達した。(2007年は1億6100万米ドル=約153億円)同年、ペルーの輸出の主な市場はヨーロッパ(61%)、次いでアメリカ(主にアメリカ合衆国とカナダ)(36%)、そしてアジア(3%)であった。輸出相手で最も重要な国はドイツ(30%)、オランダ(22%)、ベルギー(22%)、そしてスウェーデン(11%)であった。2008年、ペルー産のオーガニックコットンが初めてサウジアラビア、アラブ首長国連邦、フィリピン、ギリシャ、インドネシア、南アフリカ、タイ、ウルグアイ、イエメンに輸出された。2008年グアテマラは初めてマカ、ノニ、鮪、キャッツクロー(アマゾン流域に自生する植物)、ヤーコン(アンデス原産の根菜)を輸入し、シンガポールにもマカが初めて輸出された。
ペルーのオーガニック製品は国際的な市場でもよく知られるようになってきた。しかし、原料や素材としてだけでなく、加工品も商品化するためには、商品のプレゼンテーションやパッケージなど改良の必要な分野もある。コーヒーやココアはこのようにして改良されてきた。2009年にはインスタントコーヒーとダークチョコレートの最初の輸出が見込まれている。キヌア*やアマランサス*(どちらも雑穀の一種)などの商品は、栄養価の高い朝食の促進やバータイプの栄養食品(以降エナジーバー)キャンペーンのおかげで成長している。今後は、チョコレートとキノアやチョコバナナ、バナナ入りエナジーバーなどいくつかの商品を組み合わせて味の追求や顧客の需要に応えることも出来るだろう。
ピスコ(蒸留酒)、スナック、サチャインチ(ペルー原産のつる植物。食用油などに使用されている)やルクマ(ペルー原産の果物)などにはいい輸出の機会になりそうだ。ペルーの主なオーガニックの輸出品はコーヒーで、輸出オーガニック商品の59%を占めている。バナナ、ココアも重要な商品で、それぞれ21%、10%を占めている。オーガニックコーヒーは主にアメリカ合衆国(27%)とドイツ(27%)に輸出されている。オーガニックバナナの主な輸出先はオランダ(41%)である。ペルーのココアは主にスイス(53%)に輸出されている。その他の主なペルー産オーガニック商品にはカムカムフルーツ、ルクマ、マンゴー、ブラジルナッツ、ペカンナッツがある。その他輸出されているのは、シリアル、穀物:ごま、アマランサス、キヌア、野菜、塊茎野菜、根菜、パルムハーツ(別名パルミット。ヤシの若芽)、パネラ(黒砂糖を固めたもの)、胡椒、香料、スパイスなどの商品や、しょうが、香味ハーブなどの薬味、マカ、紫コーン、ヤーコンなどの天然商品に、コットン、アルパカなどがある。2008年にはペルーはバジル、かぼちゃ、カニワ(キヌアなどと同じアンデス原産の雑穀)、ホホバ、ノニ、アボガド、鱒、鮪など新たな輸出品目をふやしている。ペルーのオーガニックの国際的な取引窓口は主に卸売業者だが、輸出分野においては、小売業、特に高級食品の分野で直接取引を持つことが必要だと考えられている。
ペルーの環境大臣アントニオ・ブラック氏は、遺伝子組み換え食品のフォーラムの閉会式の中で次のように話している:ペルーのオーガニック食品への国際的な需要は年間8億米ドル(約761億円)、商品にして20万トンに値する。ブラック大臣は議会の中で、ペルーは先祖伝来の方法を保ちながら競争力を持っている数少ない国のひとつだと強調している。また、ペルーはバイオテクノロジーにおいて10,000年の経験をもち、3,000種類以上のじゃがいも、紫コーン、コットンがある、と言及した。遺伝子組み換え食品に関しては、大臣は取り組みについては社会的理解・同意が必要であり、国としては遺伝子組み換え食品を完全に排除することは出来ない、と指摘した。しかし、もし遺伝子組み換え食品がペルーで認可された場合、それはペルー在来の植物相以外の場所での栽培に限られるだろう。大臣は、最も大事なことはペルーがオーガニックな国で在り続けることで、遺伝子組み換え食品の汚染によって多様性がおびやかされることはあってはならない、と繰り返した。じゃがいも、コーンやコットンなどの在来作物は守られなければならない。
Dole社は同社のペルー代表Copdebanが、Sullana Valley基金を立ち上げた、と発表した。始まったばかりのこの基金は、地元コミュニティの健康と教育環境の向上と製造・梱包段階における生産者組合の権限を与えることも目的にしている。Sullana Valley基金は既に11のペルー生産者組合を包含し、2,200人以上の小規模農家を代表している。
基金は5つのプログラム:ビジネス開発、教育、健康、環境、コミュニティと発展、
に焦点をあてている。基金は輸出バナナ1箱につき1ドルの寄付により資金を得ている。Doleは2001年以来ペルー北部Piura地方で運営しており、小規模農家に技術支援をすることや地元生産者にオーガニックの生産を促すことでバナナの輸出産業の発展を助けてきた。わずか数週間で、基金は既に23万米ドル(約2,180万円)をプロジェクトに貢献し、550の新しい職を作り、40の奨学金を提供している。
ペルー北部のSan Martin地区はかつてドラッグと反政府グループShining Pathで知られていた。木の茂る丘はコカの栽培に最適であった。このような背景にも関わらず、UN職員のJochen Wieseは小作農の農家たちにコカではなくコーヒーの栽培をするという選択肢を与えた。これには、もし農家たちが協力して生産したならば国際的な市場にも進出できる、というインセンティブがあった。これが今から24年前のことである。今日、1,200人の地元の家々がOroVerde(黄金の緑)という共同事業に参加し、オーガニックでフェアトレードのコーヒーとココアの栽培に成功している。(ただし、地域の安定性は昨今の国際的な経済下落によりおびやかされている。)Jochen Wiese氏は現在もペルーSan MartinにあるUNODC(国連薬物犯罪オフィス)に勤務している。ペルーでは、コカの栽培は生産者が国営会社Enaco(紅茶に使われる茶葉を販売)に販売する限り違法ではない。しかし、警察によるとペルー産コカの90%以上が違法の薬物取引に使われているという。Wiese氏はこの共同事業が経済危機を生き残る唯一の方法は、商品の質を向上することだ、と確信している。ヴァーモントにあるGreen Mountain CoffeeのバイヤーであるEd Canty氏によると、肝心なこととして消費者のフェアトレードオーガニックコーヒーの購入が増えていることがあげられるという。氏いわく、経済危機によりペルーに興味をもつ国際的なコーヒー会社のキャッシュフローが減っていて、OroVerdeのような草の根組織が競争しやすくなっているという。UNODCの地域代表であるFlavio Mirella氏は、これこそが彼が国中に大きく広がっていくことを期待するタネだ、という。いまや23,000の家々がコーヒー、ココア、パルムハーツの栽培共同事業から利益を得ているが、経済危機を乗り越えるためには更なる個人的な投資と融資が必要である。
製品の多様性が特に豊富な84の“小ゾーン”により、旅行客は植物が人によって栽培されるようになった10,000年の歴史やペルー内の異なる民族の文化の融合をみることができる。
Inkatgerraの共同創立者として、Koechlin氏は炭素を排出しない方法によるペルーの調査を行うパイオニアだ。自然保護、研究、および社会責任に34年を費やしてきたInkaterraは宿泊設備と自然、文化活動を組み合わせたものを提供している。これらのコンセプトからは良い結果が生まれており、地元の人々による自然保護につながる環境研究は旅行産業によって資金を得ることが可能だということを証明している。
Koechlin氏によると旅行者が環境配慮の意識をもっているというのが最近の傾向で、Inkaterraは旅行者が問題にもっと敏感になる機会を提供している。外部の自然保護プログラムを支援することで、Inkaterraは17,000ヘクタールの原生林を管理しており、直接的に3,315,000トンもの炭素の排出を抑え、間接的にも毎年12,600トン以上のCO2を地面に固定している。Inkaterraのホテルはクリーンテクノロジーを使用し、環境に配慮した方法を実践している。Koechlin氏はSERNANPのボードメンバーでもある。SERNANPとは20万平方キロメートル以上(コスタリカの4倍の面積)の国立公園を管理する新しいペルーの政府組織であり、その目的はエコツーリズムに重点を置いた自立組織を作ることである。
(以上、Claudia Frost著)
Organic-Market.Infoより
http://www.organic-market.info/

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