GM作物の栽培は、取り返しのつかない環境破壊を招く
2003/05/02
出典:ル・モンド・ディプロマティーク
著者:Susan George
ATTAC(*注)フランスの副理事スーザン・ジョージは、EUのGM作物に関する歴史や議論において、できればトレーサビリティやラベル表示に関するいかなる規則も設けずに遺伝子組換を受け入れるように、という米国からの強い圧力から、欧州委員会はヨーロッパを守れそうにないと述べている。
商業ベースの遺伝子組換作物の栽培は急速に広がっている。この分野における独占企業、モンサント、シンジェンタ、デュポン、ダウ、ほか数社は、内輪の相乗効果を生み出す吸収合併の産物である。これらの企業の主張は、遺伝子組換は生命科学ビジネスの範疇である、ということだが、その概念は遺伝子、種子そしてそれにつながる全ての技術を特許化することであり、最終的な狙いは世界中の農業を実質的に支配することだ。
米国では、モンサント傘下の5つの企業がGM種子のほぼ90%とともに、それに関連する農薬・除草剤を支配している。そして、それに反対するものを黙らせるには手段を選ばないだろう。
今では、花粉がGM作物と栽培作物あるいは野生の植物の間で行き来していることは誰もが知るところである。もしもGM作物の試験農場が拡大されれば、オーガニック農業はやがて不可能となり、発展に向けて経済的に見込みのある道は閉ざされ、農家はもはや選択肢がなくなるであろう。また例え除草剤や農薬耐性のGM作物であっても、それは“スーパー雑草”や“スーパー害虫”を生み出し、農業をする上で頼りになる伝統的な植物の存在自体を脅かし、その多様性を減少させる可能性があることもわかっている。GM作物を育てることは、それが閉じ込められた空間である場合を除き、生態系を狂わせるという意味において取り返しのつかない行為である。
1999年、EUはGM作物の輸入に関し猶予期間を設けた。それに対し米国は、WTOを通じて訴訟を起こすと脅かしてきた。訴訟はまだ起こってはいない。しかし今年3月の始め、米国上院財政委員会委員長のチャールズ・グラスリー(農業が主要な産業であるアイオワ州の上院)は、ヨーロッパへの売上において3億ドルの損失があり、これは許容できない事態であり、政府は何らかの対応が、しかも早急な対応が必要であると申し立てた。
米国内の議員間にある意見の不一致もその方法と手段に関するものにすぎず、ゴールは明白である。つまり猶予期間の撤廃、トレーサビリティとラベル表示に関する規則をなくすことである。
欧州委員会農業委員長のフランツ・フィシュラーは米国のパートナーに「我々がバイオテクノロジーに賛成しているというときは、それが本当であるということを示すために全力を上げるだろう。」と述べてきた。そしてフィシュラーは実際、できる限りのことを行いそうである。その証拠は、GM作物と在来農業そしてオーガニック農業との共存というアイデアを、3月6日に委員会のメンバーに提出したこと、そしてそのアイデアを、あらゆる利害関係者とともに行う4月の円卓会議の原則として作り上げようとしていることである。様々な独立機関からのあらゆる根拠にも関わらず、彼は共存には環境的な問題はなく、それは法的あるいは経済的な問題が起きるにすぎない、と考えている。またGM作物の危険から守るために必要な対策を講じるのは、非GM作物農家の責任であると信じている。汚染者支払いの原則がある。−しかし、今回はそうではないのだ。助成の原則について、彼は拘束力のある共同体法導入のあらゆる可能性を除外している。欧州委員会たるものが、このような米国の多国籍企業を保護する決断をするとは大事件である。この政治的な遺伝子組換産業というものに対する闘いは、公衆衛生問題である。
(ル・モンド・ディプロマティーク Susan Georgeの記事より抜粋)
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*Association for the Taxation of financial Transactions for the Aid of Citizens
=市民を支援するために金融取引への課税を求めるアソシエーション