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オーガニック情報アーカイブ

vol.23 英国のオーガニック食品事情

今回は、約1年半イギリスに留学され、帰国後まだ間もない飯田夏代さんから、イギリスのオーガニック事情についてレポートいただきました。かの地で書かれた修士論文もオーガニック食品に関するものだったという飯田さんのレポートをどうぞお楽しみください。


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2003年秋より留学のため、イギリスに1年半ほど滞在しました。住んでいたのはイングランド中部に位置するスタッフォードシャー地方のストーク・オン・トレント。日本ではあまり馴染みがありませんが、古くからPotteries(陶器の町)として知られており、ウェッジウッドやロイヤル・ドルトンの工場があるところ、といえばご存知の方もおられるかもしれません。
イギリスといえば古くから自然保護に対する意識の高い市民が多く、またナショナル・トラストや地球の友、グリーンピースなどの環境団体を中心に環境運動が盛んというイメージが強いかと思います。果たして英国のオーガニック事情はどうなっているのでしょう?
渡英前、日本では、自然食品のお店など特別なところに行かない限りオーガニック食品は手に入りにくく、スーパーでもオーガニックのものを見かけた記憶はあまりありませんでした。帰国後、オーガニックも大分ブームになってきているのか、以前に比べれば目にする機会も増えたように感じますが、残念ながらまだまだ日常的に気軽に利用するレベルには至っていないように思います。
一方のイギリスでは、近所のスーパーでごく普通にいろいろなオーガニック製品を見かけます(写真上:スーパーの棚に並ぶオーガニック食品)。大抵どこも店内には必ずオーガニック・コーナーがあり、ソイル・アソシエーションなどのオーガニックの認証機関による認定マークをつけた様々な食品が並んでいます。その種類は、野菜や果物はもちろんのこと、牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳製品、たまご、ジャムや蜂蜜、パン、パスタなどの乾物類、コーヒーや紅茶、ジュースやお菓子類などの嗜好品にいたるまで様々。またそれほど多くはないのですが、サーモンやえびなど魚介類やオーガニック・チキンなどの肉類も揃えているところもあるようです。さらに、TESCO、Sainsbury’s、Morrison’sといった大手のスーパーは、それぞれ独自ブランドにもオーガニック製品を展開しています。中でもSainsbury’sは特にオーガニック食品に力を入れており、その独自ブランドのうち65%はオーガニック製品(すべてIFOAM、国際有機農業運動連盟)の認定を受けたオーガニック農場のもののみを扱っている由)だそうで、2004年にはソイル・アソシエーションより「Organic Supermarket of the Year」を受賞しています。
気になる値段については、普通のもの(普通=オーガニックでないもの、と言ってしまうのも悲しいのですが)に比べればやはり当然というべきか、割高です。オーガニック食品はそうでないものに比べて、大体1.2〜1.5倍、ものによっては2倍くらい高いと記憶しています。特に野菜などの生鮮食料品は価格の差が大きいように思いました。そのため、オーガニック食品が手に入りやすいイギリスでも、値段を理由に買わない人もまだまだ多いです。ただ、例えば牛乳やヨーグルトなど、食品によってはそれほど値段に差がないものもありますし、さらに気をつけていると、セールでオーガニック食品を安く売り出していたりすることも多いので、なるべくオーガニックを選びたいと思っていた私にとってはありがたい環境でした。
オーガニックを選ぶ理由は人それぞれかと思います。健康に気を使っている人、特にBSE(狂牛病)以降、食の安全性に不安を抱くようになってオーガニック志向になったという人。環境問題に関心がある人。そして「オーガニックはやっぱり美味しい!」という人、などなど。留学中、同じ寮に住んでいたリサもオーガニックに関心のあるひとり。自然を愛する彼女は、環境破壊を憂い、自分ができることのひとつとしてオーガニックを選んでいると言います。彼女はベジタリアンでもあるので、よく買うオーガニック食品は野菜が中心(写真下:野菜もお菓子もヨーグルトもオーガニック!)
また、たまごはいつも、free range eggsといって放し飼いにされているニワトリから採れたものを買っていました。普通のものが15個入りで230円程度のところ、free range だと12個で300円くらいするのでやはり割高なのですが、リサが「free rangeは幸せなニワトリのたまごだから」と言って買っているのをよく見かけました。「オーガニックは高いと思うけど、スーパーによっては悪くない値段のものを揃えているところも多いでしょ。買う人が増えればそれだけ価格も下がって行くはずだから、みんながもっとオーガニックを買うようになればいいなぁって思うの」とも。
市民の環境に対する意識という面では、実際のところ、期待に外れて日本に比べてそれほど高くないというのがイギリス滞在中に得た実感でしたが、オーガニック普及度の面では日本より少し先を行っている・・・そんな印象です。それには市民の要望やオーガニック団体の努力もあってのことと思いますが、一方、チャールズ皇太子や、人気シェフのジェイミー・オリバーなど、オーガニックに理解を示すセレブリティの存在も大きいのではないかと思っています。これについてはまた別の機会にご報告したいと思います。

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