イギリスの農場でMRSAが見つかる
イギリスの牛乳にMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌/マーサ)が混入していたとの研究結果の発表に従い、ソイルアソシエーションは酪農で日常的となっている抗生物質の使用を終焉させることを求めている。
ケンブリッジ大学の科学者たちは、乳腺炎にかかった牛から採取した牛乳のサンプル中に、新しいタイプのMRSAバクテリアを発見した。 これはイギリスの家畜の中にMRSAが発見された最初の事例である。
保健保護局とスコットランドMRSA関連研究所の科学者たちの協力で、同タイプのMRSAがすでにイギリスとスコットランドの多くの人々の感染源だったことが分かり、研究所の同論文でこれらの調査結果を発表している。現在までに、この新MRSAの牛からヒトへの感染の可能性を示す証拠がすでに入手されており、科学者たちはこの発見を「潜在的な公衆衛生の一大事」と呼んでいる。
酪農場でのMRSAの出現は、一頭あたりの牛の乳生産量を極端に高レベルに上げることに関連して生じた牛の健康問題に対処するために、抗生物質使用が日常化しているためである。中でも特に懸念されるのは、現代のセファロスポリンとして知られる抗生物質の使用である。これは農場で幅広く使用され、ヒトと家畜の両方でMRSA を促進していると最も強く疑われている薬剤である。リヴァプール大学の科学者たちは、以前から酪農でセファロスポリン系抗性物質を使用することは禁止するよう求めており、この抗性物質は単に「次善の管理と福祉のための支え」として機能するに過ぎず、その使用によって「福祉が改善した例は一つもない」と主張している。
ソイルアソシエーションが獣医薬理事会に提出した情報公開要求によれば、セファロスポリン系抗性物質の家畜への使用は、 WHO (世界保健機関)や欧州医薬品庁、保健所長のリアム・ドナルドソン卿が圃場での使用を制限、あるいは禁止を求めているにもかかわらず、過去10年間で4倍以上になっていることが明らかにされている。使用増加の主な原因は、農業関連出版物で幅広く宣伝されてきたこと(他のEU諸国では許されていない)、スーパーマーケットが牛乳の出荷価格を生産コスト以下に引き下げたため、酪農家はかなりの金銭的逼迫下にあることがあげられる。
ソイルアソシエーションは、自団体が認証を与えているオーガニック農場に対し、すでにセファロスポリン系抗性物質の使用を厳しく規制し、すべての抗性物質の日常的使用を禁止しており、同様の規制をすべての酪農場で適用することを求めている。
他のいくつかの欧州諸国では、MRSAの新種が牛と同様にブタとニワトリにも見つかっている。多くの人がこれらの新しい家畜MRSAで感染しており、中には死亡したケースもある。今のところ、イギリスのブタにMRSA感染は見られていないようだが、ニワトリに関しては、MRSAが報告されている国から生きたまま輸入されているにもかかわらず、検査が実施されたことはない。
ソイルアソシエーションはさらに、MRSAがないかどうか、家畜、農業従事者、獣医、牛乳、食肉、および農業廃棄物を検査するための包括的プログラムの導入を緊急に進めることを求めている。これによってイギリスは他のEUパートナー数国と同水準となり、政府は、農家に対する抗性物質の広告を許可し続ける決定を見直すことになるだろう。獣医学界が最近の協議においてこの見解を支持している – 人間の健康を保護する点に関して言えば、(家畜に抗性物質が必要かどうかを)診断するのは獣医の仕事であって、農家や製薬会社によって影響されるべきではない、としている。
出典:ソイルアソシエーション
Organic-Market.infoより
(翻訳:ボランティア 大畑 恵里さん)